送迎車が出発した後の、ふと気が抜けた午後のこと。
今年の夏は、ただ暑いだけではない。異様なほどの高温が続き、各地では40度越えの新記録が次々と塗り替えられていた。雨は降らず、田んぼも土も乾ききっている。
「このままじゃ米の収穫にも影響が出るなあ」――そんな話を事務所でしていた、その時だった。
「雨乞いをしよう!」と、施設長がまるでお祭りの余興でも始めるように宣言したのだ。
鈴木職員がすかさずスマホで“雨乞いの呪文”を検索し、LINEで送信。
ガンジ ガンジ ガンガンジ
ウンババ ウババ ウンバババ
最初は笑って見ていた職員たちも、気づけば祈祷団の一員。相変わらず、妙に団結力のある職場である。
この日の羽生の天気予報は曇り、夜になれば雨。だが、雨雲レーダーでは羽生を避けるように雲が流れていた。
それでも唱える――
ガンジ ガンジ ガンガンジ
ウンババ ウババ ウンバババ
ガンジ ガンジ ガンガンジ
ウンババ ウババ ウンバババ
送迎から戻った職員も加わり、事務所はちょっとした呪文の渦。
すると――本当に奇跡はあるのかもしれない。空が一転暗くなったと思ったら、大粒の雨が事務所の屋根、窓へ激しい音を立てながら降ってきた。
北の空には日差しが残り、青空さえ見えているのに、このあたりだけが激しい雨に包まれている。
やがて雨脚が弱まり、誰かが叫んだ。
「虹だ!」
窓の外には、くっきりと半円を描く大きな虹。それも二重の虹だ。端から端まで鮮やかに続き、10分以上も消えることなく空を彩っていた。片方の根元は家の屋根から、もう片方は土手の向こうへ。まるで「宝のありか」を示しているかのようだ。
昔から虹は「良いことの前触れ」と言われる。特に夕方の虹は、「天からの祝福」や「運命の転機」を意味するそうだ。ダブルの虹なら、なおさら――幸運が二倍になるらしい。
AIに聞けば「願いが叶う兆し」とも教えてくれた。まぁ、そういうことにしておこう。
とにかく、この日、仲間も、職員もそして空雲全体が、ちょっと特別な時間を共有できたのは間違いない。
あなたも「雨乞い」、試してみますか?
ひょっとすると、空に二つの虹が微笑んでくれるかもしれません。
ガンジ ガンジ ガンガンジ / ウンババ ウババ ウンバババ